成年後見人には、保護される立場にある成年被後見人の財産や、
権利に関する大きな権限が与えられます。
あってはならないことですが、成年後見人がその立場を利用して、
被後見人に不利益を与えてしまう可能性はゼロではありません。
成年後見監督人はそれを避けるために、第三者の立場で後見人の仕事を監督するのです。
常に判断能力を欠いている人は、財産管理や契約などの法律行為によって、
他人から不利益を被る可能性が多分にあります。
それらのリスクを回避するために国が設けているのが、成年後見制度です。
親族などが家庭裁判所に申し立てることにより、成年後見人が選任され、
判断能力を欠いている人達の財産管理や法律行為を
本人に代わって代理しておこないます。
ただし成年後見人がその権限を乱用しないとは限りません。
まして保護されているのは判断能力に欠けた人達です。
本人による後見人のコントロールが難しい状況では、
本人に代わって後見人を監督する人が必要になります。
それが成年後見監督人なのです。
成年後見監督人は、家庭裁判所が必要と認めれば職権により、
あるいは本人や関係者からの申し立てに基づいて選任します。
選任される成年後見監督人は親族である必要はなく、
法人や複数の個人が監督人となることも認められています。
成年後見監督人は基本的には後見人の仕事を監督するのが業務ですが、
後見人が本人の利益と相反する行為を行う場合は、
本人を代理する権限も与えられています。
成年後見人が、本人の利益と相反する行為を行う場合の代表的な例が相続です。
たとえば本人の兄弟が成年後見人だとして、その親が亡くなってしまった場合には、
本人も成年後見人も同じ相続人という立場になります。
このような場合、成年後見人の立場としては、
本人の利益を最大限に考えて行動しなければいけませんが、
自分も同じ相続人ですので、自己の利益についても最大限に考える権利も有しています。
このような状況での後見人の行為が利益相反行為に当たるのです。
利益相反行為は現実に争いが起きている必要はなく、
形式的にみて利益が相反する行為になればこれに該当します。
もしこのような状況になった場合は、後見人は相続人としての立場で、
そして後見監督人が判断能力を欠く本人の立場を代理して、
遺産分割協議を行うことになります。
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