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遺産の分け方(遺産分割)にかかわる民法改正

遺産分割にかかわる相続法の改正を大きく分けると、下の1から4の4点になります。

 

1.20年以上連れ添ってきた夫婦間における自宅の贈与について。

2.遺産の預金の一部を、遺産分けの話し合い成立前に相続人が引き出せる制度。

3.遺産の中の一部だけについて、遺産分けの話し合いをすることについて。

4.遺産分割協議がまとまる前に、
  『一部の相続人が預金を引き出す』など、財産を処分した時のことに関する制度

1.20年以上連れ添ってきた夫婦間における自宅の贈与について

改正によって、下のようになりました。
自宅を夫(または妻)が、妻(または夫)に贈与したとします。
自宅を夫(または妻)が亡くなった後の、遺産分けの話し合いの時に、
『原則として、この贈与のあったことを考慮しなくてよい』

 

いままでは、下のようになっていました。
自宅を贈与した夫(または妻)が亡くなったのち、
遺産分割協議をする際には、自宅の価値を遺産に戻す。

遺産分割の具体例をあげます

被相続人 夫(太郎さん)
相続人  はな子さん(太郎さん後妻)
     隆さん(太郎さんと前妻との子で、はな子さんの子ではない)

 

・遺産   :預金3,000万円
・生前の贈与:2,000万円(太郎さんがはな子さんに贈与した自宅)

いままでの民法だと、遺産分割はこうなります

遺産を分けの話し合いの対象は、5,000万円です。
預金の3,000万円に、
生前にはな子さんに贈与された自宅の価値の2,000万円を足すからです。
この2,000万円のことを『特別受益』といいます。
これの価値を遺産戻して計算することを、『特別受益の持ち戻し』と言います。

 

この5,000万円の半分にあたる2,500万円が、
隆さんと、はな子さんの相続できる権利です

 

権利通りに分けるとなると、下のようになります。
はな子さんは、この2500万円の権利のうち、
2,000万円をすでに自宅で贈与されています。
遺産の預金から受け取るのは500万円だけになります。

 

隆さんは預金3,000万円から、2,500万円を受け取ります。
『自分が亡くなったときには、持ち戻し免除する』
太郎さんが、こう明らかにしていれば、持ち戻しをせずに、
3,000万円が遺産になり、
その半分である1,500万円がはな子さんと隆さんの権利になります。

改正後の民法ですと、遺産分割はこうなります

『自分が亡くなったときには、特別受益の持ち戻し免除する』
こういう意思を太郎さんが持っていたと、推定することになりました。
妻のはな子さんは、預金3,000万円の半分である1,500万円を相続できます。

 

もし、太郎さんのした自宅2,000万円の生前贈与について、
隆さん遺産に加えたいのであれば、
『太郎さんが持ち戻しをして遺産分けする意思を持っていた』
このことを隆さんが証明しないといけません。

いつからの贈与に『特別受益の持ち戻し免除の推定』は適用?

令和元年7月1日より後にされた、贈与が対象です。
この法律の要件は、
・婚姻期間20年以上
・贈与する不動産は居住用であること
です。

2.遺産の預金の一部を、遺産分けの話し合い成立前に相続人が引き出せる制度

預金についての平成28年より前の制度

平成28年より前のことです。
多くの金融機関において、遺産の預金から自分の法定相続分の割合に相当する額を、
相続人は遺産分けの話合いをする前でも引き出せました。
遺産に1,000万円の預金があって、自分の法定相続分が4分の1なら、
250万円を引き出せたんです。

 

このわけは、
『故人様を亡くした時に、相続人は法定相続分の割合で預金を相続している。
よって預金は遺産分割の対象外。』
こう、裁判所で考えられてきたからです。
実際には、預金を含めて遺産分けの話し合いをする家族がおおいですから、
あまりぴんとこないかもしれませんね。

平成28年に最高裁が判断を変更

平成28年12月になるといままでの判断を変えて、
『預金は遺産分割の話し合いの対象ですよ。』
という判断を最高裁判所がしました。

 

次のようなときに、
相続人同士が公平になるよう預金で調整できることを優先した判断だったようです。
『生前にたくさんの贈与を受けていて、
もう相続する分は本来ないはずの相続人がいます。
この人が、遺産の預金を引き出せてしまうのはおかしい。』

 

この最高裁判所の判決を機に、相続人全員で遺産分けについて合意をしないと、
相続人は遺産の預金を引き出せなくなりました。
諸事情により相続人全員でする話し合いを、
すぐにはできないご家族もいらっしゃいます。

 

この結果、
『(故人さまに扶養されていた相続人が)生活費をおろせない』
『葬儀費用を払うためのお金をおろせない』
こういったことが問題になってきました。

遺産の預金の引き出しと民法の改正

上のような問題を解決するために、平成30年に民法が改正されて、
令和元年7月から次のような制度がはじまりました。
『遺産の預金の一部を、遺産分けの話し合い成立前に相続人が引き出せる制度』
です。

その1 相続人だけでできる手続きについて

次の額を相続人は遺産の預金から引き出せるようになりました。
預金の額×法定相続分の割合×1/3

 

ただし、1つの金融機関から引き出しできる額の上限は150万円です。
具体例をだします。
Aさんは次の場合ゆうちょ銀行から100万円を引き出せます。
ゆうちょ銀行の預金が600万円、
A子さんは故人さまの妻で、法定相続分は、1/2です。

 

100万円=600万円×1/2(A子さんの法定相続分)×1/3

その2 家庭裁判所の判断について

家庭裁判所で遺産分けの調停を行っている期間中に、
家庭裁判所の判断によって、相続人は預金を引き出せるようになりました。
金額の上限はありません。

相続手続支援センター名古屋よりひとこと

この制度で預金を引き出すには、
『自分が相続人であること』
『自分の法定相続分は〇/〇であること』
を金融機関に証明しないとなりません。

 

このための書類を整えることを負担に感じる方もいらっしゃいます。
気になることございましたらお気軽に私たちに連絡をくださればと思います

追伸

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などとおっしゃる方は、お気軽にご相談ください。

相談は無料で行っています。

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